Fさんが電話の向こうで、「元気でいてくださいね」と言ってくれた。
電話を理事長へ返した後、呆然とした。
Fさんとはほとんど顔を合わせる機会もなく、1階でFさんが絵を描いたのを見せてもらって、2階でスキャンしてポストカードや冊子や仕立てる、という仕事をしていた。
どんなふうにしますか、これでいいですか、くらいの会話しかしたことはない。
そういえば、初めて見せてもらった頃はFさんは体調がすぐれなくて、理事長経由で聞いたことだけど、Fさんには「いろんな声が聞こえたり姿が見える」、だからよく眠れないと言ってた。
その幻覚みたいなのを見えるままにキャラクターにしてスケッチブックに描いたのを1番最初に見せてもらった。
施設長の提案だったか、忘れたけど、そのキャラクターを集めて合成して封筒に印刷した。
試作を見せるとFさんから次々アイデアが出て、絵を描き足したり配置も色も何度も変更して、長い時間をかけてFさんの封筒が完成した。
それから、幻覚みたいな絵だけじゃなくて、絵本みたいな綺麗なイラストや、少女漫画的な巧みな絵をたくさん見せてもらった。
どんどん、お会いするたびに何枚も何枚も新作を見せてもらって、ポストカードをたくさん作った。冊子も作った。
今年度に入ってFさんの利用が減ったから、たぶん1年近くお会いしていない。
Fさんから電話がかかってきた時、理事長が「ちょっと待ってね、今いるから」と言って、わたしに電話を替わるように促された。
Fさんはずっと、あの人は元気かと、わたしのことを気にかけてくださってたって。
もしもし。お久しぶりです。
なんだか照れてお互いもじもじ、へへへと笑いながら話した。
Fさんは、遠い小さい声で、「元気ですか?」と聞いてくださった。
かすかな声だけど、悲しそうな声だけど、微笑んでくださっているのがわかった。
はい!なんとか、元気です。そちらも元気ですか。
また絵を見せてくださいね。描いたら。
もじもじ。へへへ。
短い電話の最後、Fさんは
「がんばってくださいね。」
「元気でいてくださいね」と言ってくれた。
がんばります!そちらも元気でいてください、と即座に返事したけど、電話を理事長に返してから、時間が経ってから、どきどきした。
Fさんが、元気でいてくださいねと言ってくれた。わたしなんかを、覚えててくれて、心配して、思いやってくださった。
なんだかわからない気持ちで、とてもとてもとてもうれしかった。
2022年1月27日
Powered by Blogger.