2022年3月19日

20年以上前か、出雲に住んでいた頃、母校の専門学校の学祭でフォルクローレを演奏した。
卒業後広島でいっしょにアトリエを借りていた仲間たち、普段楽器を弾かない絵描き集団で。

淀ちゃんがもともとケーナを吹くから、その伴奏をしようというのが発端だったと思う。いきさつを覚えていないけど、もしかしたら出雲で人に会わず心を閉じて暮らしているわたしを、栗栖ちゃんが心配して呼んでくれたのかもしれない。本番までの期間、住み込みで自分の制作仕事を手伝わせてくれて、それを頼りに広島に滞在した。作業の合間に、栗栖ちゃんの作業場で、みんなで集まって練習をした。

淀ちゃんのケーナは、いつか山で、遠くで吹いていたのを聴いたけど、ほんとうに風みたいに美しかった。夢だったのかなと思うほど。




編成は、ケーナ、チャランゴ、アコースティックギター、
ボンゴ、ボンボ(南米の太鼓)、タンバリン など

淀ちゃんが持って来てくれたカセットテープと譜面をもとに練習した。
わたしは今田先生からチャランゴを教則本とともに借りて、
初めて弾くチャランゴ、でもすぐに慣れて、いける!と思った。




ひさもりは家からギターを持ってきた。あまり弾けないと言っていたけど、「コンドルは飛んでいく」の時、イントロを弾いてもらった。本番でもすごく良かったのをおぼえている。

あの音源、残ってたらいいのに。
DVDに焼いてもらって何度も聴いたけど、とてもよかった。でも何年か経ってまた見ようとしたらエラーで再生できなくなってた。

大下は、小学校の時から鼓笛隊で、太鼓の心得があると初めて知った。とても上手でびっくりした。「コンドルが飛んでいく」の2部に入るところの太鼓は、スティックでボンボ(南米の太鼓)を叩いた。アドリブで適当に叩いてと言ったらすごくかっこいいフレーズを真顔で叩いた。普段どっちかというとドジなふうの大下が、クールで堂々としてかっこよかった。

ボンボは淀ちゃんが買った(ほんとは、わたしもお金を出す!と手を挙げたのに、そのまま代金を渡さずじまいになっている)。大下はバスドラの役割のボンボと、それから栗栖ちゃんが持ってたボンゴも叩いた。

栗栖ちゃんは「音楽が苦手」で、聴くのは好きなのに身体が動かない、ものすごいコンプレックス、と言っていて、「これを克服できたらどんなにいいだろう」とタップダンスを習い始めたと言ってた。パーカッション教室にも行っていた気がする。この時はボンゴやタンバリンを担当したんだっけ・・DVDにも、頼りない表情の、絵を描く時にはあんなに大きく見える栗栖ちゃんが背をかがめて小さくなって演奏している姿が映ってた。小さい子供みたいになっていた。

最後に2曲、ゲストで波ちゃんにうたってもらった。波ちゃんのうたに酒井先生が興奮してた。
カーラ・ボノフの「Falling star」とビートルズの「I Will」、波ちゃんといっしょに選曲した。
わたしはフォークギターを弾いて、淀ちゃんがボンゴを叩いた。
(そういえば、わたしが耳コピしきれなくて、夜、波ちゃんにピアノで音をとってもらったりした。いっしょにコード譜を作った)

淀ちゃんは銅版画や、のちには能面作りや漆塗りの修行に行った、すばらしい絵を描く人だけど、太鼓もケーナもすばらしかった。
当時も思ったけど今も思う。

夏の、どれくらいの期間だったんだろう。
ものすごく集中して、狂ったように練習した。
ほんの短期間で、演奏経験、合奏経験の少ない者や、それどころか大の苦手と泣く者、絵描き集団が、初めて聴くフォルクローレ10曲を習得して本番を成功させた。

書いていて思い出したけど、そういえばわたしは演奏後、学校の廊下で貧血で倒れて運ばれたんだった。その夜、栗栖ちゃんのお母さんがわたしの好物の手羽先を山ほど唐揚げにして出してくれた。倒れたから精をつけるようにと作ってくださったのか・・

断片を思い出す。
屋上で、風がとても強い日で、フォークギターの音は風に流されてよく聴こえなかったことや、それでもケーナやチャランゴはよく聴こえたから、さすが外で、高地で演奏する楽器だと思ったことや、
酒井先生が別れぎわ、裸にハッピ着てお祭り気分の酒井先生が、
エレベーターのドアが閉まる前、
「バンド名、つけんさい」
と言ってくれたこと。

屋上での本番の時に都合がつかなかった今田先生のために、日が落ちてから
版画の部屋かどこかで今田先生のためだけに
第二部、もう1回演奏した。

みんなは楽しかったんだろうか。熱すぎるわたしが面倒で嫌だったかも。
そのへんの記憶はないけど、
「よかったね!」とか言い合わなかったのかな。言ったのかな。
廊下でぶっ倒れた後に、大下に「生きざま見せんな」みたいなこと言われて笑われた記憶はある。

ほんとにすばらしい練習期間と本番だったんだよ。

 

 



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