2021年7月30日

夕方。やっと、紙片に行けた。
白水さんの展示を見た。

はると、帰り道、
とても綺麗な空を見た。
水色とピンク、しましま、夜7時前。

はるがずっと、「キリンレモン飲みたい」と言っていたのにすっかり忘れていて、帰り道、
尾道の、入ったことのないスーパーマーケットに寄ったり。

白水さんの絵、
うれしくなる額縁、
展示されている壁面の様子がまた良くて、
写真に撮らせてもらおうか、と
一瞬思ったけどやめた。
目に焼きつけたほうがいい、と思って、
撮ってもいいか聞くのをやめて、
目に焼きつけた。

木と木の間に、こだまみたいに
金色の線。点々。きらきら
反響。

むし暑い、尾道。
凪。
強い光。


写真家の石間さんという方は、
「尾道と広島で写真を撮りました」と言って、
広島と尾道、「いろいろ、古いものが残っていると思うんですけど、もう残っていないものを撮りたいと思って」と言われた。
聞き間違いかと思ったけど、あとで確認すると合ってた。
「もう残っていないもの」
その言葉はとても心に残った。
たしかに、「もう残っていないもの」は、展示されている写真の中に写っている気がした。

子供の頃に見た尾道を思い出したりした。
駅前の薄暗い本屋さん、ライブハウスがあると聞く地下への階段。
断片しか覚えていないけど、尾道は薄暗くて、時間が止まったようで
絶対に妖怪がいる、と感じる町だった。
何年か前、駅からバスに乗った時、その名残を感じた。ほかの乗客は全員妖怪だったりして、と思う薄暗いあかりの灯ったバス。


もう残っていないもの。
整えられて保存されることも、文字になって残ることもない、
誰かの手、仰いだ空、横顔、アスファルト、
多くの人が価値を見出さないもの
ぼんやりと浮かんだ。

写真なのに、
「残っていないもの」を撮りたいって、
面白いな、と思った。


わたしが展示を見ている間、はるも熱心に、買って帰る本を探していた。



撮らずに目に焼きつけた
その光景。
ほんとうにほっとした。

行きも帰りも、七尾さんの「STRAY DOGS」を聴いた。
サイドミラーにうつっていた。


出発した車の中ではるが、
「2人とも、ほっとする人たちだから、
ほんとに、ほっとするね」と言った。
白水さんと寺岡さんのこと。
ほんとにそう。と答えた。

ほんの1時間くらいなのにな。
すっかり心が落ち着いていた。

帰り道、約束していた浮き輪を買いに、もう1つお店に寄った。2人とも、とても自由な気持ちだった。

家に着くまで、空はどんどん綺麗な色になった。
はるは、「なんか、白水さんの絵の色みたい」と言った。
それから、橋の上で、「あー、いいな、描きたい!」と言った。

わたしは、いつもなら、写真に撮ろうとするかも。
撮れないのに。
でも今日は、目に焼きつけた。




紙片ではるは『チョコレートをたべたさかな』という本を買った。
「これにする!」
「ママがなんと言おうと、はーちゃんはこれを買うんだ!」と言って、買った。
レジに行くと寺岡さんが、この本は『鉄コン筋クリート』のシロが作中で読んでた本だと教えてくれた。
はるも大好きなシロ隊員。

わたしはトウヤマさんの新作CDを買った。
とてもうれしい。

トウヤマさんの音も、
今日見た絵とつながる、

尾道、
日が照って時間が止まったような坂道を猫が歩いて、
蝉が鳴いて、
風がとまって、
葉に光が反射して、
風が吹いて、
たちどまる
声がした気がして
ふりかえる
無音
水しぶき


だった。
そしてトウヤマさんの音だった。

はるが買った本も、とてもよかった。

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