2003年11月27日

ロシア・トゥバ共和国の「ホーメイ」の演奏会に行った。
「ホーメイ」というのは、モンゴルの「ホーミー」と同じく、口の中で『倍音』を出す歌。 何年か前にテレビで見て以来、憧れだった。
特に「ドシュプルール」という弦楽器が聴きたかった。

聴くにはトゥバに行くしかないのかと思っていたら、トゥバのトップスターたちが来日して、広島OTISへ来た。公演の案内役はヒカシューの巻上公一さんだった。

開演時間になると4人のトゥバの方々(モングンオール・オンダールさん、ヴァレリー・モングッシュさん、オトクン・ドスタイさん、ワジム・サルィグラルさん)が民族衣装でホテルからぞろぞろ歩いて来て、ムスっとしたまま演奏が始まった。

巻上さんの話。

「今日はせっかく狭い会場なので、いつも国でやるようにやって下さいとお願いしてあります。」

「ぼくは今日は、あんまり国のこととか楽器のこととか解説をするつもりがないんです。ご希望ならやりますけど、出来ればそれぞれ聴こえたように、大いに勘違いしてもらいながら、聴いてもらいたいと思ってます。」

「あと、この人たちはあんまり上手くやろうとかは考えてないと思います。ただ歌の内容を伝えるために、やってるみたいです。」


「イギル」という弦楽器は、流れ着いた種みたいな形の楽器、馬のしっぽで出来た弓で弾く。何となくバイオリンのようだけど、バグパイプのような音だった。憂いを感じない音。

 「ドシュプルール」は三味線によく似ているけれど、皮がたぶんヤギ皮で、ポンポコポコポコと低音がよく出て、打楽器もかねているような音だった。
フレットがあるのやないのや、大きいのや小さいや、四角いのや丸いのや、形がばらばらで、音もそれぞれ少しづつ違った。ほとんどがモングンオールさんの手作り品と聞いた。(ヘッドのところにはどれも馬頭琴と同じような馬の飾りが付いていた。)

 そのほか、トゥバのアコーディオン。大太鼓。それから、馬のひづめの形をした木の楽器をカッポカッポと馬が歩くように鳴らす楽器は素敵だった。

それらを全員で演奏しながら、ホーメイ。合唱は、威勢がよくて楽しくて、ものすごくかっこよかった。 聴いていたら、何でもない生活のすばらしさ、少しの荷物を持って隊列を組んで馬で出かける人々の姿や、その後ろの山や、月の光や、子供たちの顔や、夕ごはんを煮炊きする湯気や煙が見えるようだった。

巻上さん「ホーメイって言うのは、舌の動きで色んな音を出すんですけど、それを学ぶのにまず、山へ連れて行かれるんです。山の稜線を見て、舌の動きを学ぶんですね。それから、高い音は、風みたいな音がしていますけど、これも、風の音をさんざん聴いて学ぶんだそうです。」

演目がすべて終わったあと、当然のようにアンコールアンコール!と拍手が始まったけど、誰も出て来なかった。4人は外でたばこを吸っていた。
しばらくして、いかにも嫌そうに1番若い人が出て来て、ソロを1曲やってひっこんだ。 なおもアンコール!と騒いでいると今度は1番年齢の上の人が、また面倒くさそうに1人で出て来てソロをやって、終わるなりトゥバ語で、「もう終わり!もうやらないよ!帰った、帰った!」というような事を(たぶん)言って、去って行った。

巻上さんは笑いながら、「トゥバの人は『終わり』という事がとても嫌いで、 向こうでは演奏が終わると、サーッとお客さんは帰って行くんです。余韻を味わおうとしない。曲の終わりによく『シュッ!』とか、かけ声が入りますけど、あれも『終わらないため』と言うか、『つづく!』みたいな感じなんです。アンコールなんて考えられないんじゃないでしょうか。それと、明日この人たちは北九州でやるんですけど、『みんなも九州へ来るんだろ?だから明日また!』と、思ってると思います(笑)」

CDを1枚買った。
広島でドシュプルールを手作りしているという人に、自作の楽器を弾かせてもらった。
念願の楽器をさわれることに興奮して、好き勝手に弾いてニヤニヤしていたら、モングンオールさんが来て、憤慨してて、「貴様!全然、なってない!貸せ!こうだ!やってみろ!!」という感じに指導された。しまいに、「だめだ、お前は!だめ!好きにしろ!」と、吐き捨てるように言われて立ち去られた。(トゥバ語は全然わからないけど、合っているような気がする)。

偶然再会したかこちゃんと一緒に聴いて、その後かこちゃんが働いているお店へ行って、たくさん音楽を聴かせてもらって、もうすっかり朝になって、流川の道ばたでハグして別れた。

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